FC2ブログ

記事一覧

ゆかな/yu ka na(1998)

yukana.jpg

ゆかな/yu ka na(1998)

かつて戸川純は自身が率いたバンド、ヤプーズで「アンチ・アンニュイ」と歌った。ポップミュージックにおけるイメージの固定化が演者の意図とかけ離れたところで定着してしまうのは残酷なもので、戸川純は、アタシはアンニュイなだけな女ではないのよ!と主張したのだ。しかしポップフィールドで認識してもらうためにはイメージが必要なのも事実だ。しかしながら我々はアンニュイ、すなわち気怠い雰囲気のポップミュージックが嫌いか?と問われれば、いや、むしろ大好物だと言わざるをえない。もっともっとアンニュイに毒されたいのだ!そんな中紹介したいのが、声優「野上ゆかな」が1998年に「ゆかな」名義で発表したアルバム「yu ka na」である。J-POPという言葉が定着した90年代にあって歌謡曲であるという意義が薄れてしまった時代、輪をかけて認識が薄くなったジャンルに「ニューミュージック」があると思っている。「ニューミュージック」という定義をウィキペディアで軽く流し読んでみたところで解釈は様々だが、個人的にはギリギリ歌謡曲ではない、でも歌謡曲風味は残しているポップス、なんて考えているが、この作品がそういった絶妙なラインの楽曲達で構成されていると思っていて、どの曲も決定的なパンチにかけているが、そのトータルイメージとしてのアンニュイさの雰囲気作りだけで持っていかれるところがある稀有なポップミュージックなのだ。ここで勝手に言ってしまうがその「アンニュイ・ニューミュージック」最前線だと思っている80年代のシンガーに「風見律子」という方がいて、彼女が1987に発表した作品「ヌヴェル」はヨーロッパ的な倦怠感が満載されたアンニュイポップの傑作で、そういうものが好きな人には是非とも聴いて頂きたい作品だ。そういったアンニュイの系譜に「yu ka na」は燦然たるものを残していると断言したい。当作品は全作詞を野上ゆかな本人が手がけているという意欲作でもあるが、特筆すべきはアルバムプロデュース他、全アレンジ、全10曲中4曲の作曲を手がける藤原いくろうの手腕が冴え渡る全体的に重めなトーンにあると思う。野上ゆかなの申し分ない歌唱力は生かしたまま、これでもかというぐらい気怠くムーディな楽曲で静かに攻撃してくる。シングルカットもされている1曲目「All or Nothing」は、当時の若手人気女性声優とは思えない程の元気の無さ全開で、むせびなくギターと湿りきったキーボードアレンジによる沈み込んだトーンで早くもアンニュイの断崖絶壁に招待してくるから、こちらもそれなりの覚悟をもって対峙せざるをえない。。そして個人的なお気に入り曲は8曲目「瞳をとじて」9曲目「Wandering」。この2曲はアルバム後半の盛り上がりを担うラテンアレンジの幾分派手な楽曲だが、どちらもサスペンスドラマのエンディングに流れてきそうな深刻な重さがあって最高だ。しかしこれら楽曲の雰囲気は当時のJ-POPシーン、声優シンガーシーンでも異質であるような気がするが、どうだろう。しかし、だからこそ発表から20年経った現在でも変わらない独自の世界観でいまだ聴き応えがあるのだ。歌謡曲?ニューミュージック?声優POP?いや、このアルバムはそんな枠には収まらない、ゆかな流ハードコア・アンニュイポップを作り上げてしまったのだ。(小川)








スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

light mellow部

Author:light mellow部
輝かしい70~80年代の名盤の影で完全にエアポケットと化した90~00年代産シティポップ。ブックオフとかハードオフで9割引きみたいな値段で売られてるCDを執拗に堀漁る重箱の隅みたいなブログです。似たような趣味の人達の集まり共同で書いてます。たまにイベントもやります。名前は、音楽ライターである金澤寿和さんの提唱する「Light Mellow」の概念を拝借しました。
Twitter:@hukihuki5

City pop from the '90s and '00s that has completely become an air pocket in the shadow of the glorious '70s and '80s classics. It's a blog like a corner of the box where I relentlessly dig for CDs that are sold at 90% off at Bookoff or Hard Off. It's a group of people who have similar interests and write together. Occasionally we have events. The name was borrowed from the concept of "Light Mellow" advocated by music writer Toshikazu Kanazawa.