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折笠愛/ROOM SERVICE(1996)

ai orikasa

折笠愛/ROOM SERVICE(1996)

声優、折笠愛が96年に発表した2nd Album「ROOM SERVICE」は、時代の流行り廃りとは全く無縁の佇まいをもって存在している。95年に発表した1stに当たる前作「淑女超特急」が、いささかその「声優」というスタンス、そして芸能という現場感を漂わせた問題作であったのに対し、本作は一途にスタンダードを追い求めた様なストイックさが伺える。楽曲の大半が生バンドのL.A.レコーディングとなっており、名うての外国人スタジオミュージシャンをバックに歌う折笠愛のヴォーカルは堂々としており安定している。つまりこういった、ジャズやフュージョンにこなれた現場での本格的なサウンドプロダクションで声優のアルバムを出してしまったという事実は痛快であり、これが96年当時メディアでどう扱われたのか?とも思うが、ともかくここには音楽の持つあらゆるパワーが存分に込められている。クオリティの高い楽曲と演奏、歌唱はもちろんだが全曲の作詞を手掛ける鬼才枯堂夏子にも注目したい。アルバム冒頭を飾る曲「人生は間違いのオンパレード」というタイトルを聞いただけで、音楽とはこういうものであると納得せざるをえない。歌詞の一部分「人生は間違いのオンパレード だけどそれが 人生よ」と極々当たり前の事を言っているだけではあるが、これが楽曲としてサビのメロディで歌われた時の破壊力は相当で、とてつもない高揚感をもたらしてくれる。こういった言語感覚が下世話にならずに小洒落た感覚で軽めに歌いこなすのは実に粋であって、重たいメッセージソングとかけ離れた世界は居心地が良い。2曲目「SAFETY MAN」はL.A.録音らしいシックなフュージョン~ファンクで実にかっこいい。そして当時30代前半であっただろう折笠愛の声の艶と表現力にも注目したい。声優アルバムの魅力は専業歌手とは決定的に違う、映像的な声の表現力にあると思っており、危険なのはミュージカル的なクドい表現に行き過ぎてしまう事もあるのだが、歌うのと演じるのが職業柄同時進行で行ってしまうのが面白いところで、なんというか演奏やトラックとは別に、歌が立体的に浮かび上がってくるような気がするのだ。5曲目「そろそろなにかが変わってくる」もL.A.録音らしいスケールの大きいアメリカンロックなサウンドで気持ちいい。しかしながらアルバム全体を通してサウンド的に新しい事をしている訳でもないと思うのだが、かといって職業作曲家が仕事で作ったような保守的な部分も見当たらない、バランスの取れた実に良い作品であって、こういったなんてことない90年代のCDアルバムの持つ幸福度は凄いと思うのだがどうだろう。こういう物が、和物とかレア・グルーヴの衣をまとい、再び音楽シーンへ飛び出していく事を願っているが、果たして。(小川)










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補足。この記事がリリースされた後すぐにネットで買い、ついでにLetterというアルバムも安売りされてたので買ったんですけど、Letterの方は全然シティ感無いです。Letterは買わなくていいです。

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light mellow部

Author:light mellow部
輝かしい70~80年代の名盤の影で完全にエアポケットと化した90~00年代産シティポップ。ブックオフとかハードオフで9割引きみたいな値段で売られてるCDを執拗に堀漁る重箱の隅みたいなブログです。似たような趣味の人達の集まり共同で書いてます。たまにイベントもやります。名前は、音楽ライターである金澤寿和さんの提唱する「Light Mellow」の概念を拝借しました。
Twitter:@hukihuki5

City pop from the '90s and '00s that has completely become an air pocket in the shadow of the glorious '70s and '80s classics. It's a blog like a corner of the box where I relentlessly dig for CDs that are sold at 90% off at Bookoff or Hard Off. It's a group of people who have similar interests and write together. Occasionally we have events. The name was borrowed from the concept of "Light Mellow" advocated by music writer Toshikazu Kanazawa.