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豊嶋真千子/STEEPLE ANGEL〜とんがり天使〜(1998)

とんがり天使

豊嶋真千子/STEEPLE ANGEL〜とんがり天使〜

豊嶋真千子の1998年に発表した1stアルバム「STEEPLE ANGEL〜とんがり天使〜」を名盤と言っていいのか、それとも声優が発表した企画アルバムとして一過性で忘れられていくものと捉えられるかは分からない、というか世間的な評価はこの作品に対して全く聞いた事が無いので、正面きって「名盤である!」とは言い難いが、それでもここに収録された数曲は奇跡のポップに到達してしまっているという事実は変えようが無い。アニメ声というのは聴く人を選ぶというのは歴然としていて、つまりは「フェイク」というのは評価を得る前に消費されてしまうものだ。そしてそれが「ポップス」という領域になると数倍にも不利な状況に陥ってしまうが、声優アルバムという特殊な仕様は、その声優のファンに売れればOKというもので、バカ売れする必要は無いし極端に言えば評価も必要ないのだ。しかし、しかしながら作品というのは発表した以上残ってしまう。この作品が発表されてから20年!という歳月を経て、このいかにも声優的なアニメ声、いや、それでも豊嶋真千子のそれはまだ聴きやすい方だとは思うそれを今の時代に提示してみてどう感じるかは気になるところだ。アルバム2曲目の「Set Me Free」は多分にガラージュ的手法で構築された、ノリの良い曲ではあるが、ヴォーカルにソウルフルは感じる事はできず、か細いアニメ声だ。しかしこれが強烈にグッと来てしまう。作曲、アレンジの佐橋俊彦さんという方を調べるとKENSOのキーボーディストを経てアニメーションはもちろん、様々な分野で活躍されている作家で、一聴ペラいDTM的バックトラックに聴こえてしまいそうだが、このヴォーカルを支えるものとしては「極上のペラさ」だと思う。ブラスアレンジ、コーラスも能天気で聴いていて楽しくなってしまう。そしてこのパワーの無いヴォーカルが奇跡の情緒感を生んでしまうのだ。これは90年代に森高千里が編み出してしまった手法ではなかったか?聴き手をどこか遠い所に連れ出すのは何も技術だけが必要というのではなく、頼りなさ、弱さなんかも重要な要素になってくるはずだ。豊嶋真千子の歌声はその細さがグングンと鋭くなり岩石を無自覚で貫通し、とんでもない場所に連れていってくれるのだ。そしてその無自覚な超極細ドリルは5曲目の「ロックン プリンセス」で地球を貫通し、日本の裏側のオーストラリアの大高原へ飛び出す程の爽快感を与えてくれる。この曲の作・編曲は永井ルイだ。そう、あの永井ルイだ。永井ルイが作った名曲「乙女のポリシー」は、昭和生まれであれば誰もが知っているポップのスタンダードであり、その類まれなポップセンスが豊嶋真千子ヴォイスに降りかかってしまったらどうなってしまう?世の中にはびこるエセポップの化けの皮がメリメリと剥がれ落ちて消え去ってしまうほどのポップの破壊力であり、これはもはやハードコアポップ他ならない。そしてそのウルトラポップな楽曲に乗る、歯が浮く程ポジティヴな歌詞は声優アルバムにありがちだが、永井ルイ楽曲に絡むとその効力は威力を増して、まるで宇宙の真理を解いているようだ。好きになったとかフラれたとか恋愛を絡めて金を毟り取る90年代のJ-POPシーンにおいてこの有様はまるで狂人レベルだ。ポジティヴこそが凶悪であり世界を殺傷できる。この2018年、様々な陰鬱な出来事があったがこのアルバムが存在しているという事実に世界が脅かされる日がいつか来るだろう。(小川)






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