FC2ブログ

記事一覧

米倉利紀/passione(1993)

yonekuratoshinoripassione.jpg


ベテランR&Bシンガーにしてブックオフ280円棚シーンの重鎮でもある米倉利紀だが、実店舗で「あ行」から五十音順に棚をDIGっていく際、スタミナ切れにより、ついついチェックがなおざりになってしまいがちな「や行」に属するため、とかくスルーされやすい存在であることは否めない。そんな米倉にシティポップ的な目線でフォーカスするならば、セルフプロデュースへの移行に伴いR&B 色が濃くなる6thアルバム『mad phat natural things(1996)』よりも前の初期5作品となると思う。

本作『passione』は、1993年に発表された3枚目のオリジナルアルバム。全11曲中、米倉の自作曲は4曲に留まり、その他の7曲には、羽田一郎や都志見隆などの職業作曲家を起用している。
奈良部匠平というアレンジャーがクレジットされている作品がどれも素晴らしい。
M3「HOTEL CLASSIQUE」は米倉の自作曲で、ゴージャスなホーン使いが印象的なソウル歌謡の傑作。歌詞の中身は、婚約者のいる恋人と逃げるようにパリに旅行に来ちゃいました、だけどこの旅行が終わったらその恋人は結婚しちゃうのでそれを思うと寂しいです…という、いけすかない設定で、セーヌ、クロック・マダム、カルチェ・ラタンなど、フランス/パリを表象するキーワードがいくつも散りばめられているのが特徴。しかしながら、アコーディオンやハープといった、いかにもフレンチでござい!な楽器は一切使用しておらず、ブリージンなトラックに仕上がっていて、若き米倉の甘やかなヴォーカル、美しいファルセットと抜群に相性が良い。
M8「Mismatch」は和製スウェイ・ビートの隠れた名曲であり、本作のベストトラック。SMAPへの曲提供で知られる野崎昌利のキャッチーなメロディが印象的で、後の米倉作品には見られない、アイドル歌謡の如きフレッシュな輝きを放っている。
上記2曲の他、同じ奈良部匠平編曲によるM11「瞬きをしないままで」も聴きもので、クワイエット・ストームと郷ひろみのバラードの間を攻めるような、癖になる一曲。その他にも、清水信之のアレンジによるスロウジャムM10「slow」など、捨てがたい良曲が並ぶ。

この時期の米倉の作品は、彼がアイドル的歌手から本格派シンガーにステップアップしていくにあたってのキャリア上の過渡期であることに加え、世間的にも、ブラコン/ニュージャックスウィングからR&Bへとトレンドが移り変わっていく潮目に位置するため、正直なところ、アルバム全体通しての統一感は希薄。しかしながら、曲単位で再評価したいソウル歌謡の良曲が数多く収録されており、なかなか無視できない存在だと思う。

ちなみに、本作を含む90年代の作品は、いずれも280円棚で容易に入手可能。本作以外のアルバムだと、セルフプロデュース移行後の『i(1998)』『flava(1999)』もオススメです。(F氏)
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント