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川村万梨阿/月と桜貝(1993)

maria kawamura

川村万梨阿/月と桜貝

1993年作、吉川洋一郎プロデュースの川村万梨阿のアルバム「月と桜貝」の完成度の高さはいわゆるタレント、声優の作品としては異彩を放っているが、日本の音楽シーンでの評価が見当たらないのは需要と供給のバランスが合致しなかったのか何なのか、今となってはどうでもいい事なのかもしれないが、川村万梨阿の歌声やバックの演奏、アレンジメント含めて普遍的に聴かれてもおかしくない魅力に満ち溢れている。川村万梨阿の繊細な歌声を使って吉川洋一郎が描くのは、どこか懐かしさも感じさせる異国感のある素朴なポップ。ヴァイオリン、ピアノ、アコースティックギター等をふんだんに使った耳に優しいポップは、しかし攻撃的な刺激に溢れた現2018年の音楽シーンには逆に過激に捉える事もできないだろうか。これは遊佐未森や高野寛なんかが台頭した90年代前半の正統派?ポップシーンの流れが現在のメインストリームには見当たらなく、野心的なアニメーションの音楽製作や、むしろオルタナティヴな分野で活動するミュージシャンの手法として、こういった耳心地の良い音楽の在り方が認識されている気がする。そしてそういった一見素朴な装飾に見られる楽曲を支えるのはトラディショナルミュージックの底に流れるアヴァンギャルドな土着性だ。本盤に散見される民族音楽的手法を、それと分からないように昇華させているのは吉川洋一郎の類まれなるセンスに他ならない。93年のポップシーンにおけるこの盛大な冒険は讃えても手に余るほどだ。(小川)

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