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杉田二郎/サマーソング for you(1989)

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 1960年代末から活動するベテラン・シンガーソングライター杉田二郎による、1989年発売のリレコーディング・ベストアルバム。ジローズ、はしだのりひことシューベルツ、ソロと、(現在はあまり顧みられない、非はっぴいえんど系譜の)ニューミュージック系湿性フォークを演奏しつづけてきた彼だが、時代に寄り添うこのような作品もリリースしていた。
 自身が過去に発表した作品から海をテーマに選曲、それを80年代後半型のデジタルなプロダクションによって再録音するというコンセプトから推測されるとおり、シティポップと呼んで差し支えないだろう曲がいくつか収録されている。
 馬飼野康二編曲による①「サマーソング for you」は明らかに大滝詠一『ロングバケーション』を意識したようなアレンジ。薄口のオケと朗々とした杉田の歌唱が良い塩梅。おそらく本作のベスト・トラックは中西康晴の②「海においで」。ミディアムテンポの模範的なボッサ系AORチューンで、演奏も余裕に溢れており心地よい(本作、演奏家クレジットがないのが残念。杉田の貫目を考えればかなり豪華な面々ではないかと思う)。独特のアクは抑えめ、サラッと力を抜いて歌唱する曲が多いのも本作の特徴。③「昨夜」はブレッド&バターの岩沢幸矢作曲のマイナーフォーキーAOR。全然シティポップではないが、④「朝日の前に」はなぜかミュンヘンディスコ路線(船山基紀編曲!)。⑦「自由をありがとう」は、イントロのいやらしいベースのグリッサンドがプラスチックなアダルト感を演出するフェイクジャズ。⑨「男どうし」もウェストコースト・ロック色強めのAOR(80年代のジャクソン・ブラウンっぽい)。
 コンサバなベテラン・シンガーソングライターの後年作というのはかなりギャンブル性の高いジャンルであり、完全に批評的視線からこぼれ落ち続ているがゆえネット上にもまともな評はほぼなく、その内容を知るにはとりあえず買って聴くしかない。失敗も多いが、このような佳作に当たると報われた気持ちになる。

1.サマーソング for you(作詞:魚住勉 作編曲:馬飼野康二)  
2.海においで(作詞・作曲:杉田二郎 編曲:中西康晴)
3.昨夜 with ブレッド&バター(作詞:許瑛子 作曲:岩沢幸矢 編曲:船山基紀)
4.朝陽の前に(作詞:北山修 作曲:杉田二郎 編曲:船山基紀)
5.祈り ~Prayer~ with 森山良子(作詞:きたやまおさむ 作曲:杉田二郎 編曲:岡崎倫典)
6.青春の別れ道(作詞:北山修 作曲:杉田二郎 編曲:船山基紀)
7.自由をありがとう(作詞:きたやまおさむ 作曲:杉田二郎 編曲:中西康晴)
8.Your Magic with 小林明子(作詞:松本一起 作曲:宇崎竜童 編曲:志熊研三)
9.男どうし(作詞:北山修 作曲:杉田二郎 編曲:山本肇)
10.STAY(作詞:魚住勉 作曲:馬飼野康二)

プロデュース:芥川澄夫、杉田二郎
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プロフィール

light mellow部

Author:light mellow部
輝かしい70~80年代の名盤の影で完全にエアポケットと化した90~00年代産シティポップ。ブックオフとかハードオフで9割引きみたいな値段で売られてるCDを執拗に堀漁る重箱の隅みたいなブログです。似たような趣味の人達の集まり共同で書いてます。たまにイベントもやります。名前は、音楽ライターである金澤寿和さんの提唱する「Light Mellow」の概念を拝借しました。
Twitter:@hukihuki5

City pop from the '90s and '00s that has completely become an air pocket in the shadow of the glorious '70s and '80s classics. It's a blog like a corner of the box where I relentlessly dig for CDs that are sold at 90% off at Bookoff or Hard Off. It's a group of people who have similar interests and write together. Occasionally we have events. The name was borrowed from the concept of "Light Mellow" advocated by music writer Toshikazu Kanazawa.