lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50 Vol.2 25位→1位
- 2020/08/10
- 13:59

本記事は、「lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50」のVol.2(25位〜1位)になります。
50位〜26位についてはVol.1を御覧ください。
lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50 Vol.1 50位→26位
※選考/掲載にあたって
・lightmellowbu員から、F氏、小川直人、カズマ、キュアにゃんにゃんパラダイス、KV、柴崎祐二、タイ、台車、たまお、ハタ、波多野、バルベース、鯔を愛する男と、ゲストレビュアーのanòuta若山、カルト、佐藤あんこ、リアルアナコンダ各氏の合計17名の個人ランキングを、上位曲から下位曲までを点数化/集計した上、総合ランキングを作成した。
・1990年から1999年までに発売された、邦人アーティスト歌唱曲を選考対象とした。ヴァージョン違い/ライブ・テイク等については別曲とせず、同一曲として扱った(他アーティスト歌唱の場合は除く)。また、例えばミックス違いバージョンのみに投票があった場合、当該バージョンを選出した。
・シングル、オリジナル・アルバム収録曲はもちろん、オムニバス・アルバムや、サウンド・トラック作品収録曲も対象とした。
・掲載ジャケットについては、アルバムとあわせてリリースされた8cmシングル曲などの存在が確認できるが入手困難である場合など、アルバムのアートワークを掲載することで対応した。
25.

ONE STEP communicate/小さな真夏を口移す(daylight mix) 1994年
ミニ・アルバム『ONE STEP communicate』(パイオニアLDC)より
作詞:Ren Takayanagi/作編曲:Hiroyoshi Yano
80年代に隆盛を極めたシティポップは、90年代においてはすっかり作品世界と現実都市の実態との乖離が起きており、都市の表象としての役割しか果たせずに形骸化し、意匠化されたサウンドであふれていた。せいぜいリゾートやレジャーのお供としてのシティポップからは楽曲本来の機能は失われ代わりに台頭したJ-POP(決して渋谷系ではない)にとって変わられた。90年代以降の音楽とは80年代的な(アクセサリー的に)自らの外部に置くものではなく、自己表現として内面化し、大衆の依代として機能するものであった。そんな時代の一点で見れば時代遅れとしか言えないが、綴れ折るカルチャーの地層に取り残され、埋もれ、留まり続ける人々に対する心強さ、頼もしさを感じずにはいられない一曲。(台車)
24.

BROSS/24時間愛しているよ 1994年
アルバム『オトコはそれをガマン出来ない』(ソニー)より
作詞:ロドリゲス大島/作曲:トレメンダス寺田/編曲:BROSS、松本晃彦
BROSSは詳細不明のラテン・ポップ・バンド。某レビュー・サイトにはロクな事が書いてない、レビューも付かない、mixiのファンコミュにはシングルにタイアップが付いた事ぐらいしか書かれていない。曲はコミック紛いの助平ソングという、いかにもローカル・ショー・バンドの類が偶然にも2枚もアルバムを出した。そんな中にも実は名曲があり、この曲だけはスイート・メロウ・ラブソング。糞盛りの楽曲を掻き分けて見つけた彼らの真心がこの一曲に。無名バンド、歌手がマシンガンの如く世に放たれ大半はどこにも当たらずネットにすら記録が無い、そんな時代にリリースされた胡散臭い集団の想い出作りみたいなアルバムの珠玉の1曲に、どうしようもなく"90年代らしさ"を感じて個人的1位に据えた。(ハタ)
23.

麗美/Everlasting Love 1991年
アルバム『夢はおいてませんか?』(ファンハウス)より
作詞・作曲:堀川麗美/編曲:萩田光男、堀川麗美
端的に言ってデキが良すぎる。1989年にファンハウスへ移籍した麗美は、当時の情勢から環境問題や平和をテーマに歌うことが多くなり、編曲もどっしり系のサウンドがメインとなっていた。そんな中で本曲は麗美の甘々なソング・ライティングもさることながら、トーキング・モジュレーター(演奏は柿崎洋一郎!)をバリバリに使用した萩田光男の編曲が冴えまくり、まるで「夢がおいてある」かのような1曲である。あえて腹から声を出さず、ロマンチックに仕上げたボーカルも素晴らしい。当時の麗美としては非常に浮いていながら、結果として時代を超えた「Everlasting」を勝ち得ている。「柔らかくて豊か=メロウ」とは、まさにこのこと。(あんこ)
22.

森川美穂/POSITIVE 1991年
シングル「POSITIVE」(東芝EMI)より
作詞:佐藤純子/作曲:西司/編曲:中村哲
森川美穂はとにかく歌がうまい。それは声が綺麗だとか、ピッチが完璧だとか、そういうことに加えて「表現力」がある。表現力は押し付けがましさと紙一重だ。歌がうまいタイプの女性ヴォーカリストの壁のひとつに、独りよがりな「私の歌を聴いて!」感をいかに乗り越えるかという課題があると思っている。しかし、森川美穂はその壁を易々と乗り越えている。爽やかで伸びのある歌声は不思議と胸焼けせず長く聴いていられる。このバランス感覚が森川美穂の魅力なのではないだろうか。「POSITIVE」というタイトルの通り、一点の曇りも感じさせないゴージャスなメロディとアレンジが特に森川美穂のヴォーカルと相性が良い名曲だ。(たまお)
21.

村瀬由衣/眠る記憶 1993年
アルバム『眠る記憶』(ファンハウス)より
作詞:吉元由美/作曲:鈴木雄大/編曲:船山基紀
彼女を知ったきっかけは山田秀俊のサイトから。聖子ちゃんや大瀧詠一等々、鍵盤、コーラスの名セッション・マンとして知られる彼の90年代一押しの作品として挙がっていたのだった。しかも、名アレンジャー船山氏の90年代の力作とも。1曲目を飾るアルバム・タイトル・ソング、鮮烈でタイト極まりない櫻井哲夫と神保彰のJIMSAKUによるリズムを軸に、透明感ときらびやかさに包まれた演奏。朋友・鈴木雄大の良き旋律に乗る、吉元の甘いデジャヴを描いた詩が、潤いに満ちた村瀬の歌に映えるミディアム・メロウの秀曲。(波多野)
20.

久野かおり/Love In The Mist 1991年
アルバム『ROSE』(徳間ジャパン)より
作詞:福岡有/作曲:久野かおり/編曲:難波正司
シンガー・ソングライター兼サックス・プレイヤーという奇妙な肩書でお馴染みの久野かおりによる4thアルバム『Rose(ロゼ)』からのミドル・テンポな佳曲。久野かおりの抑揚がきいたメロディーを雨後の霧のごとく難波正司のシンセ・アレンジが優しく包み込む。心地いい演奏の中、雨だれの様に落ちてくる「カーン」という音の配置の巧さが個人的にグー。空想・観念的歌詞に彼女の透明感ある歌声が乗る構図は「AdamとEve 1989」等の初期から確立されているが、「Love In The Mist」にも<忘却のマント一枚/この肩に欲しい夜もあるわ/Ha Ha>というキラーフレーズが。(タイ)
19.

川村康一/Funny 1990年
アルバム『STEP on the“Cherry” WAVE』(BMGビクター)より ※同発8cmシングルもあり
作詞・作曲:川村康一/編曲:岩崎文紀
川村康一によるハワイ録音のセカンド・アルバム『STEP on the“Cherry” WAVE』収録曲にして、アルバムと同発のシングル曲(B面は「SHIRLEY」)。パーカッションを多用したラテン・フィールなアレンジが、青空いっぱいのリゾート感を演出する。ドシャバシャしたアタックの強いリズムは、川村が角松敏生の正統的フォロワーであることを見せつける。オケの突き抜けた派手さはもちろん、コーラス・アレンジの巧みさも特筆モノで、編曲を務めた岩崎文紀のセンスが炸裂。キレの良いシンセ・ホーンの林立を掻い潜って途中挿入される向井滋春のトロンボーン・ソロの湿り気が、アダルティーな余裕を注入する。(柴崎)
18.

中野麻衣子/週末のLovelorn Girl 1991年
アルバム名『Bay Side Story』(東芝EMI)より
作詞:田口俊/作曲:西脇辰弥/編曲:西脇辰弥
90年代シティポップの1つの魅力に「情報が少ない」という点がある。無論ただの短所でもあるのだが、だからこそ手垢の付いた論評に振り回されることなく、再生される音だけを頼りに当時を夢想するという楽しみが残されている(しかも運が良ければ格安でCDが手に入る)。この曲に関する情報もネット上にはほぼ無く、アルバム自体が蜃気楼のような存在であるが、アレンジャーの西脇による都会的な音の構築は素晴らしく、収録されている1stアルバム『Bay Side Story』の題名どおり、港町のシティ・ガールの機微が描き出されている(本人が横浜港近くの出身らしいため、あるいは自伝的な要素も含まれているのかもしれない)。(キュ)
17.

SMAP/雨がやまない 1995年
アルバム『SMAP 007〜Gold Singer〜』(ビクター)より
作詞:久和カノン/作曲:寺田一郎/編曲:長岡成貢
オマー・ハキム、ウィル・リーら「スマッピーズ」部隊の録音の中でも特に名曲の誉れ高いのが、森×木村歌唱によるこちら。フリーソウル文脈での「Joliie」を想起するイントロから、少しハネたような高揚感をサビ~間奏と余裕でキープ。これはリマスター盤を切に求めたくなる、盤石のグルーヴィーさ。森の王道歌唱を対立軸に据えることで木村の「俺様度」がそれなりに中和されている点も、「シティ・ポップとしてヨリ聴ける」ポイントのひとつか。(anòuta若山)
※諸事情により試聴音源無し。
16.

Platinum900/眩しいフォトグラフ 1999年
アルバム『Free(at last)』(BMGジャパン)より
作詞・作曲:Naoko Sakata and Kazuhiko Nishimoto/編曲:Hiroshi Iihoshi
終わっていった物事に対するセンチメンタルは心の中で綺麗に育って眩しい思い出に変わっていくけど、いつだって現在の出来事こそが素晴らしい。そんなメッセージが込められた思い出にまつわる曲。どの曲を取り上げてもおかしくないアルバムだが、とりわけストリングスとエレピのエレガントさに聴き惚れ、今回の選曲となった。フリーソウル感覚全盛だった時代柄もあり、それらの音楽を養分に培われた過去の音楽への審美眼がPlatinum900の芳醇で、タイムレスな名曲群を作り出している、と感じた。(台車)
15.

井出泰彰/肌に惹かれて 1995年
作詞:朝水彼方/作曲:井出泰彰/編曲:Danny Schogger
アルバム『COOL BLUE』(ソニー)収録
90年代を代表するJ-AORシンガー・ソングライターの2ndアルバム収録作(シングルも同発)。スティーヴ・ガッドやウィル・リーといった海外の腕利きミュージシャンと共に制作された今作は、スムース・ジャズのような質感のシルキーなメロウ・バラード。この手の音楽が下火になった時期に、これほど明確に提示するのはかなり貴重である。もう今後この手の豪華バック・ミュージシャンを取り揃えたAOR物のアルバムを作るのは難しいだろう。今作以降はハード・ロックに振れていく。(ハタ)
14.

THIS TIME/Sweet Cherry 1993年
シングル「Sweet Cherry」(日本クラウン)より
作詞:KEIKO SUZUKI/作曲:KEIKO SUZUKI,YOSHIYA KOMORI/編曲:THIS TIME
小森義也と鈴木恵子のデュオによる傑作2ndアルバム収録のシングル曲。70年代ソウルを基調とした正統派シティポップが並ぶアルバムの中で一際グルーヴィーなこの曲は、インコグニートなどのアシッド・ジャズやUKソウルとの共振が感じられる、非常に90年代らしい煌びやかで多幸感溢れるサウンドとなっている。また、理由は不明だが、アルバム中、この曲だけ少しこもったような謎の音質になっていて、そこに鈴木の(フォルダ時代の三浦大知のような)イノセントなヤング・ソウル声が重なって涙腺をゴリゴリ刺激してくる。因みに、音楽マニアとして高名なクリス松村氏は2人と旧知の仲だそうで、先日、自身のラジオ番組でこの曲を流していた。(F氏)
13.

笠原弘子/大切な休日 1994年
シングル『大切な休日』(wea)より
作詞:宮島律子/作曲:M Rie/編曲:西脇辰弥
OLシティポップのアンセム。90年代シティポップの題材は、それまでのハイエンドな都心の生活から周縁化し、都市近郊で営まれる等身大の暮らしも扱うようになった。「OL」は代表的な聴き手であり、モチーフとしても頻出する。「大切な休日」では、仕事に疲れたOLが「キュークツな都会を抜け出して」恋人と海で「キュンとくるようなHoliday」を過ごすという内容。西脇辰弥によるE,W&F「Sunday Morning」を下敷きにしたファンキーなアレンジと、華やかなシンセが夏の休日の開放感を演出し、否が応でも高揚させられる。笠原の上手いが情感の乗らない声優歌唱は、特徴を欠く故の生々しさがあり堪らない。(カルト)
12.

野見山正貴/最後の夏 1993年
アルバム『face』(アポロン)
作詞:売野雅勇/作曲:野見山正貴/編曲:CHOKKAKU
すべてを説き伏せるイントロのバイオレントな清涼感!CHOKKAKUの打ち込みが冴えまくるオメガトライブ系統のサマー・ブリージン・シティポップ。その後ボイス・トレーナーとしても活動する野見山正貴のハイトーン・ボイスは、青空に駆け上がっていくよう。オクターブ奏法を交えた直井隆雄のギター・ソロも極めて洒脱。青春の終わりを予感するような歌詞(by売野雅勇)も超最高。サビ導入部 ー永遠に17のまんまならいいのにね…ー というフレーズのキラーっぷり。明るく抜けるような曲に、ほんの少しの寂寥が忍び寄る……。初めて聴いたとき、私は泣きましたね。TBSラジオ『アフター6ジャンクション』のハタ&柴崎出演時にもプレイされた「buクラシック」の一曲。(柴崎)
11.

崎谷健次郎/Melody 1990年
アルバム『ただ一度だけの永遠』(ポニーキャニオン)より
作詞:松井五郎/作編曲:崎谷健次郎
1988年の2ndアルバム以降、持ち味であるAOR的作風に”NYの最新サウンド”を取り込んできた崎谷。4thアルバム『ただ一度だけの永遠』では、洗練されたAOR、ソウルと、ハウス、ブラコンが絶妙に配合されている。冒頭曲である「Melody」は崎谷のソウル側面の白眉。マーヴィン・ゲイの「Mercy Mercy Me」そのまんまではあるのだが、元ネタにはない派手なアレンジが魅力。崎谷のハイトーン・ボイスとコーラス・ワーク、ストリングスが噛み合わさるサビのカタルシスにはいつも心酔させられてしまう。松井五郎によるロマンチックながらどこかチープな歌詞世界も甘い心地を誘う。(カルト)
10.

斉藤由貴/ホントのキモチ 1991年
アルバム『LOVE』(ポニーキャニオン)より
作詞:斉藤由貴/作曲:山口美央子/編曲:上杉洋史
終始ゴキゲンな亀田誠治のベース、江口信夫のドラムでグイグイ牽引される推進力がとにかく魅力的。けれど、例えば山下達郎の「Sparkle」が80年代シティポップの1つの頂点であるとして、斉藤由貴のこの曲がヤマタツと同じ「シティポップ」なのか? と問われれば即答は出来ない。鮮やかなリゾートの情景は目の前に広がらないし、ファンキーなカッティングも縦横無尽のホーン・セクションも聞こえてこないからだ。
系統は大きく違えど、それでも「シティポップ」の気配を感じるのは、80年代の都市/リゾートに対する膨らみすぎた夢が終わりを告げ、物語の舞台が等身大の日常へと収縮する「失われた時代」への予感が随所に滲み出ているから。それまでとは異なる価値観による新たな舞台でのポップス表現であるように思えるのだ。斉藤自身によるあまりにも刹那的/散文的な歌詞と、退廃的で他人事っぽい醒めた歌い方がそれを裏付けている。そんな解釈に立脚し、80年代から90年代を繋ぐ橋渡し的な楽曲……と言いたいところだが、実はそんな橋などなく、橋桁ごと転覆して時代は断絶してしまっていたのだった。(キュ)
9.

谷村有美/6月の雨 1990年
作詞・作曲:谷村有美/編曲:西脇辰弥
シングル『6月の雨』(ソニー)より
これまで立ち寄ったブックオフの棚に、谷村有美の無いことがあっただろうか。今も当然のようにマケプレ1円で手に入るCDの中に、このような楽曲が入っていることは、まさに文化である。正直なところシティポップという括りで9位に食い込むとは思っていなかったが、他にも13位、18位と西脇辰弥編曲が上位ランクインしていることから、ある程度は納得できるのではないだろうか。西脇は2014年に独自開発のブレス・コントローラーを販売するなどシンセ・ブラス界の大家だが、本曲では生の4管隊をフィーチャーしており、ホーン・アレンジがバッチリとハマっている。きらびやかな楽曲世界へ誘い込む序盤、Drums:土屋敏寛をはじめとしたバックの名演で引っ張る中盤、大サビの全音2回上転調でブチ上がる終盤と、4分5秒の楽曲展開に隙がない。また井上剛(元OPCELL、アイトゥアイコミュニケーションズ代表)による、録音/ミックスの良さも特筆である(私がオーディオ製品を買う際のリファレンス音源は本曲だったりする)。谷村有美は「時代に愛された女」だが、そんな彼女の楽曲の中でも特に「時代に愛された1曲」だと思う。(あんこ)
8.

小田育宏/save up your love 1992年
アルバム『talk to you』(アルファ)より
作詞・作曲:小田育宏/編曲:佐藤準
神戸出身のシンガー・ソングライター小田育宏によるファースト・アルバム『talk to you』収録曲。モロ70年代後半なAORマナー炸裂のオケに乗るジェントル・ボイスは、マイケル・フランクスやスティーヴン・ビショップにも通じるふう(ちょっとキャリア初期の田島貴男っぽさもある)。ソング・ライティングの巧みさも一級品だと思う。奥ゆかしげなAメロからサビに直結する軽やかかつナイーブな風情よ。胸を締め付けられる切なさ。第二期AOR(プチ)ブームの中でのデビューということもあり、「たまたまシティポップぽい音楽性になってしまっている」とかでなく、ちゃんと自覚的に「上質のメロウ・サウンドを作ろう」という明確な意志に貫かれているように思うが、かといって渋谷系的な「DJ感覚」とも隔絶し、オーセンティックな「ミュージシャン倫理」のようなものに貫かれているのがいい。編曲(Key.兼務)は佐藤準、バックは山木秀夫(Dr.)、美久月千晴(Ba.)、今剛(E.Gt.)、国吉良一(Key.)、浦田恵司(Syn.Op.)、北城浩志(同)という神々しい布陣。ちなみに小田はこのあとセカンド作を出したのち阪神大震災で母堂を亡くしたことを契機に神戸へ帰郷、音楽産業を後にするのだった……。(柴崎)
7.

Trade Love/Seaside Love 1995年
アルバム『paradise door』(クリスマス・エンタテインメント)より ※8cmシングルもあり
作詞:島影江里香/作曲:大門一也/編曲:徳永暁人
ELIKA(島影江里香)のソロ・ユニットによる2ndシングル。90年代前半を席巻したビーイング・サウンドにシティポップ要素を大いに取り入れた夏らしい名曲。堅くドッシリとしたドラムにスラップして跳ねるベース、ボーカルの穴を埋める様に挿入されたメロディックなギター・ソロなどフュージョンを下地にしながらも、ホーンの代わりに大胆に使用されているチープなシンセが楽曲の全体的なイメージを決定付けている。ELIKAの歌い上げる歌唱法もハマっており、2020年の今、近い楽曲を挙げるとするなら「オリーブがある/裸のSummer(Sampling Source)」以外ないだろう。95年産のシティポップは東京Qチャンネルの「SQUALL」とこちらの二大巨頭で間違いない。(タイ)
6.

宮沢りえ/心から好き 1992年
『東京エレベーターガール』オリジナル・サウンド・トラック(ソニー)より ※8cmシングルもあり
作詞:Kikuji/作曲:山田直毅/編曲:難波正司
エースコックのCM、映画「エロティックな関係」と92年にだけ何故か連発した「宮沢りえ×ビートたけし」作品群の中で唯一出来の良い、たけし変名作詞によるミッドナイト・フライデー・ミディアム。いかにも当時的なグラウンド・ビートに片足かけたリズム+終始パッショナブルに鳴る伊東たけしのアーバン・サックスの中、熱帯魚のような優雅さで彼女の声がすべり込んでくるとそこはもう「最上階」のエレガント世界。主題歌であった「東京エレベーターガール」の「エレベーター」を別モードへの扉に換骨奪胎させる発想があったとしか思えない(因みにドラマ自体は取り立ててアーバンでも何でもないドロドロ不倫モノで、放送後舞台となったデパートとモメたらしい)。同曲収録のサントラ盤も全曲難波正司編曲、シングルと同一のラグジュアリーさを湛えた素晴らしい出来で、フュージョン、クラシカル、ジャジー、更にはモノローグと多岐にわたりながらも一貫して92年の音像が刻まれておりマスト。(anòuta若山)
5.

斉藤由貴/誰のせいでもない 1991年
アルバム『LOVE』(ポニーキャニオン)より
作詞:斉藤由貴/作曲:柿原朱美/編曲:上杉洋史
尾崎豊と不倫愛の末に別れたその年の冬に発売された『LOVE』は、斉藤由貴のもっとも俗な部分を描いた……と言いたくなるが、その曲・歌詞・歌唱の純度の高さと極限まで無駄を削ぎ落としたアレンジは逆に彼女の楽曲を極限まで聖化したように思う。
「誰のせいでもない」で私たちは斉藤由貴の懺悔を知る。
「ごめんなさい 愛してます 今でも」
そこにはファン・サービスの慰みものでも欺瞞の等身大でもない、25歳の女性の愛への葛藤と苦しみがある。淡々とした曲調に諦めを込めて、しかし理解への期待に悩む女性。まさに『LOVE』だ。そんな報われない恋愛を究極に聖的なラブ・ソングに昇華させたこの曲を聴くとき、私たちは斉藤由貴というキャラクターを媒介せずにこの曲に想いを重ねてしまう。斉藤由貴は、"斉藤由貴"というキャラクターを歌う生意気なアイドルから、切実な愛を歌うひとりの女性になったのだ。
そしてこのアルバムもとい曲を通して、私たちは斉藤由貴を私事化することに成功したのである。私は、彼女の切実な言葉を、エモーショナルだが儚い歌唱を、それを支える素晴らしい作編曲家の奇跡と必然の巡り合わせに、祈るような気持ちで今日も「誰のせいでもない」を聴いている。(たまお)
4.

東京Qチャンネル/SQUALL 1995年
アルバム『Switch on!』(東芝EMI)より
詞:須藤まゆみ/曲:割田康彦、須藤まゆみ/編曲:割田康彦
けっこうどんなジャンルの曲だって作れちゃう器用な人っているじゃないですか。自分はそんな人ってすごいなーと思う反面、個性がなくてつまんねーなって思っちゃうんです。だってジャンルで作れちゃう人って模倣の域からは出られてないと言うか、パラメータの振り切ってるところが無いことが多いですからね。最近は特にそういう人が多いと思うんですよね。で、東京Qチャンネルのコンポーザーである割田さんもどちらかというとそういう系統の小器用な方だと思うんですが、それにしてもこの曲は素晴らしい。イントロの過剰な感じなんかF1のサウンド・トラック系フュージョン・サウンドっぽくて、スカッと抜けてていい気分になるなあ。すどぱぁの歌も良いよなあ。疾走感のある夏らしい曲をクーラー効かせた部屋で疾走感無く聴くのが一番気持ち良いよ。東京Qチャンネル最高!!東京Qチャンネル最高!!東京Qチャンネル最高!!東京Qチャンネル最高!!東京Qチャンネル最高!!東京Qチャンネル最高!東京Qチャンネル最高!!(台車)
3.

具島直子/Candy 1996年
アルバム『miss.G』(東芝EMI)より ※8cmシングルもあり。
作詞・作曲:具島直子/編曲:桐ヶ谷“ボビー”俊博
ライトメロウ的観点から90年代のJ-POPシーンを俯瞰するとき、彼女の名前を取り除いたら大きな空白ができるだろう。具島直子はそれほどの存在感をもつアーティストだ。どこか夜明け前の海を想起させる彼女の歌声は聴く者の心に強い印象を残し、歌手としても稀有な存在だと思わせる。桐ヶ谷俊博の卓越した手腕のもと、数々の名曲をものにしてきた彼女の代表曲とも言えるのが、記念すべきファースト・アルバム『miss.G』に収録されている、この「Candy」だ。中西康晴、島村英二、岡沢章といった手練れたちが織り成すメロウ・グルーヴと、一種の静謐さをたたえた彼女の歌声とが聴く者を深みへといざない、そうして穏やかに漂っていると、彼女のファルセット・ボイスの切実さが耳を打ちハッとさせられる。これほど心地よく翻弄される曲はそうそう無いのではなかろうか。聴くたびに魅力の増す名曲だ。ちなみにこの曲には松尾潔によるリミックス・バージョンも存在するので、そちらも聴いてみてほしい。(バルベース)
2.

有賀啓雄/Rain Dolphin 1992年
アルバム『Umbrella』(ファンハウス)より
作詞・作曲・編曲:有賀啓雄
雨の歌って不思議とワクワク、素敵な曲が多い。「Singing In The Rain」、「Raindrops Keep Falling On My Head」、「Laughter In The Rain」…etc。憂うつな気分なんて置いといて、雨と一緒に戯れながら楽しみましょうと。
この曲が2位になったのも、長引く梅雨の時期に選んだことと無関係じゃないんじゃないかなと思う。雨粒が虹色にキラキラと輝くような音の連なりはとても鮮烈で、イルカ達と一緒に雨の中に踊れば、心はぱぁーっと明るく。雨が好きな雨歌いが作り出した90年代のワクワクドキドキ雨の名曲。ドラムの青山純、ギターの佐橋佳幸、コーラスは木戸泰弘に比山貴咏史、マニピュレーターに遠山淳と確かな布陣で固められている。
ベーシストとして音楽キャリアを始め、山下達郎にデモが耳に止まり、ソロ活動を推されデビュー。そこからして音楽家としての才能は推して知るべし。プロデューサー、アレンジャー、作詞、作曲家として着実な活躍を続け、現在では小田和正、藤井フミヤのバンド・メンバーとして重要な一翼を担っている。彼自身のアルバム、作ったりしないかなぁと心待ちに。(波多野)
1.

村井博/夏の隠れ家 〜Weekend Resort〜 1990年
アルバム『NATURAL』(パイオニアLDC)より
作詞:森浩美/作曲:羽場仁志/編曲:GREG MATHIESON
楽曲が再生された途端、心象風景がリゾートに変わるこの感じ。まさに「こういうのでいいんだよ。」な堂々たるシティポップ・クラシック。80年代後半に登場し、数年で消えていった泡沫AORシンガーの一人、村井博がグレッグ・マティソン等LAフュージョン筋を迎え制作されたのが3rdアルバム『NATURAL』であるが、中でもこの「夏の隠れ家 〜Weekend Resort〜」は頭ひとつ抜きん出た印象の楽曲。
ローが弱く少しシャリついたイントロは涼しげで、村井博のゆったりとした甘いボーカルが非常にリラクシン。歌詞も「都会での日々で疲れ切った心を夏の隠れ家(僕はログハウスかと思っている)で癒す」といったようなバラードで、「豊かな時代」を感じさせながらも、随所に散りばめられたコーヒーや食事、ドライブといったキーワードが現代の我々の生活との距離感を縮めてくれる。皆もう飽き飽きしているかもしれないが今だからこそもう一度、逃避主義や懐古趣味でなくシティポップの「チル」な効能について考えてみたい。(タイ)
50位〜26位についてはVol.1を御覧ください。
lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50 Vol.1 50位→26位