lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50 Vol.1 50位→26位
- 2020/08/10
- 12:07

今年も夏が来た。もしかしたら、今年は夏が来ないんじゃないかと思われもした。もし来たとしても、それは「夏」と呼べないなにかなんじゃないかとも。しかし、様々を通り抜けながらも、夏はこうしてやってき(てしまっ)た。
今や、シティポップが(本当に)シティポップであった時代は、どんんどんと遠のいていくようだ。しかし、それだからこそ、その残り香は今一層芳しく感じられてならなくもある。先だって『レコード・コレクターズ』誌上で、「シティ・ポップの名曲ベスト100 1980-1989」という特集があった。いろいろな賛否を醸したそれに触れて感じたのは、シティポップが(本当に)シティポップであった時代の感覚(薄れゆく実際的記憶)をもってしてはもはや、この音楽が現在に向かって照射するきらめきや、「残り香そのものの芳しさ」を捉えることは難しいのだろう、ということだ。過ぎゆく「リアルタイム感覚」と黄金時代を称揚する「シティポップ観」は、既に歴史の書棚に安息を求めつつある。
そうして書架に保存される80年代でもなく、ましてや70年代でもなく、今、「芳醇な過去」として沈着な評価を待っているのは、おそらく90年代の「シティポップ的なるもの」なのだろうという思いは、相変わらずしぼむことがない。熟れて、膨らみ、何かが弾けたその時代は、決して「失われた未来」などというものでもなく、今もっとも実際的に遠のきつつある「記憶の豊穣」だ。それをあなたが/わたしが現実に体験したかどうかはこの際問題でない。熟れた果実は、忘却という風雨に触れたときにこそ、もっともその味わいを(「今」に向かって)魅せつけるし、その味わいの見事さ/鮮やかさを書きつけるには、練達の士のそれより、もぞもぞとうごめく野生の味蕾による方がよいかもしれないのだ。
今回、lightmellowbuのbu員諸氏と、ゲスト諸氏(敬称略:カルト、リアルアナコンダ、anòuta若山、佐藤あんこ)の協力を得て、各人推薦曲へ投票の上、「90年代シティポップ名曲ランキング best50」として、ランキング式レビューをとりまとめることとなった。以下はその結果報告である。
「みなさまのひと夏を彩るBGMとして、素敵なシティポップサウンドいかがでしょう?」。そんな声が、90年代の夏からやってきて、2020年へこだましてくる。うだるような重い空気を、蜃気楼のきらめきでごまかしながらも。ただ、そのきらめきそのものの美しさを汚すすべは、どんなに私達が弁を弄するにしても、(幸運にも)封じられているようでもある。今年も、夏を(よろしければこれらの音楽とともに)お愉しみください。
※なお、全体のランキングは長大なヴォリュームになってしまうので、50位から26位までと、25位から1位までの2つにエントリーを分けてアップする。本記事は、50位から26位までとなっている。
25位から1位までのランキングは以下から御覧ください。
lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50 Vol.2 25位→1位
ーーlightmellwbu編集委員 柴崎祐二
※選考/掲載にあたって
・lightmellowbu員から、F氏、小川直人、カズマ、キュアにゃんにゃんパラダイス、KV、柴崎祐二、タイ、台車、たまお、ハタ、波多野、バルベース、鯔を愛する男と、ゲストレビュアーのanòuta若山、カルト、佐藤あんこ、リアルアナコンダ各氏の合計17名の個人ランキングを、上位曲から下位曲までを点数化/集計した上、総合ランキングを作成した。
・1990年から1999年までに発売された、邦人アーティスト歌唱曲を選考対象とした。ヴァージョン違い/ライブ・テイク等については別曲とせず、同一曲として扱った(他アーティスト歌唱の場合は除く)。また、例えばミックス違いバージョンのみに投票があった場合、当該バージョンを選出した。
・シングル、オリジナル・アルバム収録曲はもちろん、オムニバス・アルバムや、サウンド・トラック作品収録曲も対象とした。
・掲載ジャケットについては、アルバムとあわせてリリースされた8cmシングル曲などの存在が確認できるが入手困難である場合など、アルバムのアートワークを掲載することで対応した。
50.

障子久美/TRUTH 1990年
アルバム『MOTION & MOMENT』(ビクター)より
作詞・作曲:障子久美/編曲:ジェリー・ヘイ
障子久美のセカンド・アルバム『MOTION & MOMENT』のオープナー曲。ベスト盤等でも無視されているが、軽めのスムース・ファンク調の本曲こそは彼女のキャリア中でも屈指の名曲といいたい。堂に入ったソウル風のキャラクター・ブランディングをまとわされているが、その歌声は結構ピーキーで、むしろガールポップ的とさえいえるかも。そのへんのヴァーサタイルな味わいこそが彼女の歌唱の魅力か。とはいえども、この曲の最大の魅力はそのオケ。ジェリー・ヘイがアレンジを務め、ジョン・ロビンソンなどがバッキングに名を連ねる。余裕綽々のくせにすごい推進力の演奏は、さすがの一言。(柴崎)
49.

三原善隆/Moonlight Whisper 1993年
アルバム『Night Rider』(日本コロムビア)より
作編曲:三原善隆
エレクトーン界のフュージョニスト、三原善隆によるバラーディ・インスト。アルバムの締めに配置されているが、そこ以外の並びが想定できないほどに終幕感が溢れる。長きにわたるプレイの末流れたゲームのエンディングのような、やり遂げた瞬間の安堵・疲れ・一抹の寂しさを混然と喚起するメロディ。満ち引きするキーボードに促されるまま夜空を仰ぎ見、滴下されるパーカス、バレアリックなベースラインのゆりかごで微睡みゆく。久石譲「風の通り道」がふと過ぎるニューエイジ調のアレンジも、境界を越えれば二度とその地に踏み入れない聖域性を演出するような。夢うつつのあわいに迷い込んだ幼い夜へ一瞬還るロマンティック・ファンタジア。(KV)
48.

GWINKO/夏のおわり、近づいた空 1990年
アルバム『I’M IN』(ソニー)より
作詞:大山潤子/作曲:柿崎洋一郎/編曲:柿崎洋一郎
安室奈美恵やSPEED、DA PUMPを輩出し、90年代のJ-POPにおいて圧倒的な存在感を示した沖縄アクターズスクール。その1期生でありアクターズスクール出身第1号タレントとして東京進出の礎を築いたのがGWINKOである。シンセサイザーとビートを強調することによるダンサブルなアレンジは、久保田利伸のアレンジャーとしても活躍していた柿崎洋一郎の仕事。イントロでのスネアの連打が80年代までの歌謡曲との線引きのように感じられる。芸能面でも音楽面でも90年代の始まりを予感させる一曲。(リアルアナコンダ)
47.

折笠愛/SAFETY MAN 1996年
アルバム『ROOM SERVICE』(パイオニアLDC)より
作詞:枯堂夏子/作曲:前田克樹/編曲:根岸貴幸
LAで地元のセッション・ミュージシャンを集めてレコーディングされた本格的なサウンドではあるが、声優・折笠愛の声のパワーは全く引けを取る事なくそれに応えている。余計な演出が入っていないストイックなサウンド・プロダクションは非常に抜けが良く、とりわけ間奏のシンセ、ドラム、パーカッションの掛け合いはとてもかっこいい。そして曲タイトルの「SAFETY MAN」、すなわち保険を効かして恋をするような男についてのフックまみれの歌詞は枯堂夏子の本領発揮といったところで、必要以上にアダルトな歌唱が相まって突き刺さる。(小川)
46.

オリジナル・ラヴ/接吻 kiss 1993年
シングル『接吻 kiss』(東芝EMI)より
作詞・作曲:田島貴男/編曲:オリジナル・ラヴ
テレビ・ドラマのタイアップのために、当時27歳の田島貴男が生み出したJ-POP史に残る大名曲。サビから始まるというJ-POPにありがちな構成ながら、AORの空気を含んだ演奏と哀愁を帯びた大人の恋愛の歌詞という、都会的でアダルトな楽曲となっている。中森明菜や中島美嘉など数多の歌手によりカバーされているのも名曲たる所以だろう。ボサノバやレゲエにアレンジされたカバー・バージョンも楽しんでいただきたい。ちなみに現在は表記を“ヴ”から“ブ”に改名し“オリジナル・ラブ”になっているため注意されたし。(リアルアナコンダ)
45.

マイカ・プロジェクト(熊谷幸子/白いKISS 1992年
プロモーション・シングル「SACHIKO KUMAGAI」(東芝EMI)より
作詞:不詳/作曲:熊谷幸子/編曲:本間昭光
カルピスウォーター発売当初、そのCMタイアップ曲は熊谷幸子というポップ・マエストロの第一歩であり、ユーミンらマイカスクール完全バック・アップの、最高最強のサマー・アンセムであった。極彩青空シンセ+ゲート・リバーブ・ドラムのニュー・ウェイヴィな音空間と熊谷印の凝ったコード進行は、XTC通過後のシティポップという喩えを誘引し得るポテンシャル。ウォーター・スライダーに駆け寄る高揚感を数倍ブーストするようなスプラッシュ感覚はあまりにも鮮烈だ。ただこの曲、収録が一般流通なしのプロモ8cmシングルのみで、かつ滅多に出会えない幻の一枚だったりする。これを掘るまでは死なぬ…ディガーとしての自己のレゾンデートルと化した一曲。(KV)
44.

シングライクトーキング/Is It You 1995年
アルバム『Ⅲ』(ファンハウス)より
作詞:佐藤竹善、藤田千章/作編曲:表記なし
ソウル、AOR、フュージョンと、大人向けの音楽を一貫してやり続けてきたシングライクトーキング。「Is It You」は3rdアルバムに収められた中でも、一際AOR度が高いナンバーだ。歌詞に「時の砂漠で旅の果てに見つけた湖は」とあるが、アルバムの中でのこの曲はまさにオアシスのような透明感で心を潤してくれる。ジョン・ヴァレンティノのサックスは強くは主張せず、あくまで佐藤竹善のヴォーカルに寄り添うように響いているが不足はない。その竹善の声は力強い中にも穏やかさが感じられ、歌詞に登場する女性への想いがじんわりと心に届く。80年代に隆盛を極めたAORが更に進化を遂げ産み落とされた究極の一曲。(カズマ)
43.

氷上恭子/恋のかけら 1998年
アルバム『HYSTERIC NOISE』(マリン・エンタテインメント)より
作詞:ひかみきょうこ/作曲:西岡和也/編曲:伊藤信雄
声優・氷上恭子の98年アルバムより、歌手としての活動を通した彼女の作品群の中で屈指のメロウ曲にして傑作である。R&B調の楽曲ではあるが、ソウルフルには行かずシンプルにまとまったヴォーカル・スタイルには実直さを感じる。それは本人の資質もあるのだろうが、ギミックを排しきった快楽がここにある。J-POP的な押し付け感とはかけ離れた、野暮ったくはあるが一歩一歩確実に踏み込んでくる感じで、これは声優的な演技力が関係してくるのかは分からないが、太くもなく細くもない歌唱がとにかく突き刺さる。シティポップ・ブームの昨今ではあるが、彼女が現役の内に再評価を求めたいところだ。(小川)
42.

古内東子/大丈夫 1997年
シングル「大丈夫」(ソニー)より
作詞・作曲:古内東子/編曲:小松秀行
元オリジナル・ラヴの小松秀行とのタッグにより制作された超名盤6thアルバム『恋』の先行シングルにして、極上スロウ・グルーヴ。70年代のソウル・ミュージックをヒップホップを経由せずにリヴァイヴァルしたような、さながらレニー・クラヴィッツの「It Ain’t Over ‘Til It’s Over」の如きヴィンテージ感のある音像。それでいて80年代までのシティポップとも一線を画した、初期古内東子の到達点ともいうべき、名曲中の名曲。リアルタイムで正当に評価され、普通に高セールスを記録した、90年代シティポップの中では珍しく幸福な作品といえるだろう。(F氏)
41.

吉野千代乃/Driving In The Rain 1992年
アルバム『JOURNEY TO LOVE』(アルファ)より
作詞:田辺智沙/作曲:林哲司/編曲:林哲司、中村圭三
吉野千代乃はいわゆるポプコン関係のシンガーで、1986年にアルファ・レコードからデビュー。ベストやカバーを除いたら6枚目に当たるアルバム『JOURNEY TO LOVE』は90年代シティポップの名盤で、あの林哲司がプロデュースを担当した。中でも「Driving In The Rain」は林哲司らしいクルージング・サウンドがゴキゲンなキラー・チューンだ。林自身もソロ・アルバムで「Loving in the rain」というタイトルでカバーしている。(バルベース)
40.

障子久美/city plot 1992年
アルバム『because it’s love』(ビクター)より
作詞・作曲:障子久美/編曲:トム・キーン
キャリアを通して明確にソウル〜R&Bサウンドを志向していた障子久美。やがて花開く2000年前後のJ-R&B文化よりも随分と時代を先取りしていた。本曲は彼女の楽曲群の中でも一際ソフィスティケートされており、量産型R&Bに陥らずに小気味良いシティポップとして昇華されている。「街」に何かを焦がれるような彼女の歌声と、これを支える打ち込みドラムによる端正なグルーヴが印象的。5年早くても遅くても成立し得なかった絶妙なシティ・サウンドは、確かに煌めきながらも時代の潮流に飲み込まれていった。(キュ)
39.

平岩英子/昨日見た夢のように 1997年
アルバム『Airium』(ソニー)より
作詞・作曲:平岩英子/編曲:小松秀行
ふらりと寄った行きつけのブックオフ。熱帯魚とランデヴーする涼しげなジャケに惹かれて買った一枚。アウター・ジャケが欠けてると知ったのはしばらく後(90'sCDあるある)。憂いを帯びた独特の声であっさりその世界に引き込まれ、しばらく愛聴盤に。なかでもこの曲は、小松秀行のアレンジ、古内東子で馴染みの面々によるメロウ・グルーヴに徹する演奏の強度、そして彼女の歌いこみがじわじわ効いてくる極上ミディアム。あまりの心地よさにDJやmixでもいまだヘビロテの1曲。ぜひ復活して素敵な歌声をまた聞かせて欲しい。(波多野)
38.

熊谷幸子/みんな雨の中 1992年
アルバム『ART OF DREAMS』(東芝EMI)より
作詞:マイカプロジェクト/作曲:熊谷幸子/編曲:熊谷幸子・松任谷正隆
いたるところに熊谷節が散りばめられた「天の川の岸辺へ」がアルバムに対する期待感を高めたまま終わり、駅のホームのSEを切り裂くようなドラムのフィルインからこの曲が始まりイントロのリフが高らかに鳴り響いた瞬間、『ART OF DREAM』がとんでもない当たりだということを確信するに至ることとなります。ちなみに熊谷幸子の作詞はすべてマイカプロジェクト名義になっていて、マイカアカデミー講師の田口俊がその中にいるのはまあよしとして、1~3枚目までは松任谷由実の名前もあります。歌詞だけとはいえ、熊谷幸子のソロにどれだけユーミンが関与していたのか知りたいところ。(鯔)
37.

かとうれいこ/夜はやさし 1995年
アルバム『itch』(ポニーキャニオン)より
作詞・作曲・編曲:高浪敬太郎
高浪敬太郎が作詞・作曲&編曲を手掛ける本曲は、高浪ワークスの中でも抜きん出ていると思う。湿度は低めだが、ピチカート・ファイヴ『ベリッシマ』の系譜にあるシティポップの本曲は、グルーヴィーなベースやパーカス、すっきりと気の利いたブラス、あっさりしているが艶っぽいかとうれいこのヴォーカル、そしてムードしか伝わってこない夜の切なさ(?)を表現した歌詞に至るまで、とにかくお洒落すぎる。高浪ファンとして、高浪ワークスに求めるものが完璧に表現されている。楽曲のサウンドやヴォーカルの弱さは王道のシティポップとははっきり言って別物だが、このあまりにもアーバンで洗練された楽曲は「渋谷系シティポップ」(筆者の造語)と呼びたい。(たまお)
36.

川村康一/SHIRLEY(SPECIAL UPTOWN MIX) 1990年
アルバム『STEP on the “Cherry” WAVE』(BMGビクター)より
作詞・作曲:川村康一/編曲:岩崎文紀
角松敏生や杉山清貴らを引き合いに出されることの多いSSWの2ndアルバムより。カラパナも参加したハワイ・レコーディング・アルバムのリードを飾るデジタル・ファンク。パシャーと伸びるスネアにゴリッとしたシンセ・ベースが生み出すカッチカチのリズムに浮ついたオーケストラ・ヒット、そして時折顔を出すカウベルの打ち込みに、90年代のリゾート・ポップスを担っていくという気概を感じる一曲。ド直球ラブ・ソングな歌詞に、この高揚感。バブルはまだまだ終わらない。(台車)
35.

ICE/DRIVE 1996年
シングル「BABY MAYBE」(東芝EMI)より
作詞・作曲・編曲:宮内和之
夭逝したカッティングの名手・宮内和之が率いたICE。渋谷系に括られることもあり、確かにピチカート・ファイヴに通じるようなポップな歌メロ、都会的な女性ボーカル、ハウス解釈は共通するが、ダンス・ミュージックとしての機能性の高さは他グループから群を抜く。「DRIVE」はヒットシングル「BABY MAYBE」のB面として収録された。目立つ展開は特にないが、同じリズムを執拗に繰り返すベースと、鋭いながらリラックスした宮内のカッティングによって、思わず体が動いてしまう。そこに終始曲を支配する冷たい手触りのシンセが相まって、洒脱な夜のドライブが演出される。80年代シティポップでは中々見られない、引き算の美学が光る名曲。(カルト)
34.

SMAP/言えばよかった 1998年
アルバム『SMAP 012 VIVA AMIGOS!』(ビクター)より
作詞・作曲:樋口了一/編曲:CHOKKAKU
「国民的」という枕詞がふさわしい、平成の日本を代表する5人組アイドル・グループによる11枚目のオリジナル・アルバムに収録の本曲。作詞作曲は『水曜どうでしょう』のエンディング・テーマでもおなじみの樋口了一。繰り返されるギター・リフと動き回るベース・ラインというファンク・マナーなトラックに乗せて歌われるのは、引っ越してしまう相手に自分の想いを伝えられなかったという切ない後悔を描いた歌詞。曲の中盤で披露される中居正広のソロ・パートがいつにも増してハスキーな歌声であり、それが余計に切なさを加速させる。(リアルアナコンダ)
※諸事情により試聴リンク無し。
33.

深津絵里/彼女のダンスを見にいこう 1992年
アルバム『Sourire』(ビクター)より
作詞:谷亜ヒロコ/作曲:間瀬憲治/編曲:安部 “ohji” 隆雄
2015年に一旦告知されたベスト盤が発売中止になるなど、深津サイドは過去のアイドル活動を掘り起こされたくない(?)ようだが、楽曲に罪はない。谷亜ヒロコと間瀬憲治のタッグは、佐藤聖子「二人のEXTRA-SHOT」や中野理絵「宇宙は2人のために」などを産み出した隠れ良相性コンビだが、本曲はその中でも随一の出来だと思う(特に谷亜の歌詞が素晴らしい)。安部王子の編曲もケチの付け所なく、マシナリーなドラムと流れるようなストリングスが相性抜群。狙ったというより、宅録マジック的に偶然うまくいった面が大きいように感じる。ちなみにコーラスが新居昭乃なのは、同時期に安部王子とPSY・Sのライブバンドで一緒だったから。(あんこ)
32.

坂本龍一 Feat.高野寛/君と僕と彼女のこと 1994年
アルバム『Sweet Revenge』(フォーライフ)より
作詞:大貫妙子/作曲・編曲:坂本龍一
大貫妙子作詞、『Sweet Revenge』の大トリに配置されたメロウ・ボッサ的なこの曲は、単に教授の日本回帰盤のひとつとしてではなく、「都会」「色彩都市」と地続きの「坂本/大貫流シティポップ」の94年モードとして今や聴かれるべきと思う。アレンジを切り詰めたストイックな「空虚さと隣り合わせのメロウネス」は当時的な都市感覚そのものと言え、更にゲイ的読解も可能な歌詞の持つ繊細な色気は『ニューヨーク・ニューヨーク』(羅川真里茂)のイメージとダブらせることも可能だろう。(anòuta若山)
31.

佐藤聖子/地上9mの宇宙 1995年
アルバム『CRYSTAL』(フォーライフ)より
作詞:馬場俊英/作曲:佐藤聖子/編曲:武部聡志
90'sガールポップのジャンヌ・ダルク=佐藤聖子。名曲の宝物庫であるディスコグラフィから、ラスト・アルバム収録のこの曲を。彼女自身のソウル・フィーリング溢れる綺羅星のごときメロディ、武部聡志の得意とする点滅型キーボード〜シンセ・プログラミング光る煌々としたアレンジ、そして馬場俊英のロマンティック極まりない歌詞 ー冬のベランダで宇宙へと意識を飛ばし、たまゆら遊泳する恋人たち ーが無比のトリニティを構築する。宙空への係留をステーションとしてサポートする鳥山雄司のギターはささやかで、見つめ合う二人の気を散らすことはない。imaginationを試みる街角、喧騒の搔き消えたその暖かな一瞬に永遠が見つかる。(KV)
30.

高野寛/ベステンダンク 1990年
シングル:ベステンダンク(東芝EMI)より
作詞・作曲・編曲:高野寛
東西のドイツが統一され歴史が動くのを誰もが目の当たりにした90年。そのインパクトは大きく、高野寛の5枚目のシングルはドイツ語で「誠にありがとう」の意を持つ「ベステンダンク」と名付けられた。プロデュースしたトッド・ラングレンの魔法は曲全体を支配してこそいないが、ここぞという所でピリリと効いている。特にアレンジがトッドのアイデアでシティポップとして名曲!と推せるレベルまで引き上げられている。もともとのギターポップ風だったアレンジもネットで聴けるが、正直薄味でとてもシティポップとしては推せない。ここにはシティポップとしてはお決まりの都会も海もないが、一人の若者の心意気が胸を打つ。(カズマ)
29.

水谷優子/NUDELY 1991年
Various Artistsアルバム『今夜は絶対カーニバル!!』(ユーメックス)より
作詞:前田耕一郎/作・編曲:山川恵津子
本曲収録のアルバムは、豪華声優陣を配したコンピレーションではあるが、いかにもアニメのサントラ的な佇まいに見えて、その実は当時制作中であったアニメーション作品「フリーキック」のキャストを集めたバラエティ歌唱アルバムである。つまりその作品と曲とは何も関係がないという事になる。この立ち位置は例えば原作があってのイメージ・アルバムや、キャラクター・ソングを集めたものと比べると意図不明というか異質ではあるが、ブックレット/ライナーには「お祭り騒ぎ、馬鹿騒ぎ」と記してあるからにして、あまり細かい事は気にせず楽しむものなのだろう。その中で山川恵津子の手によるこの曲は異色のモダンなシティポップに仕上がっている。(小川)
28.

ESCALATORS/Fly High 1994年
アルバム『PLANET e』(日本コロムビア)より
作詞:ZOCCO/作曲:Hiroyuki Kawanishi & ZOCCO
和製ジャズ・ファンク・バンドの1stフル・アルバム『PLANET e』の冒頭を飾る1曲。ブラン・ニュー・ヘヴィーズの「DREAMS COME TRUE」を連想させる、パワフルなドラムと爽やかなホーンが印象的なアシッド・ジャズ・サウンド、ヴォーカルZOCCOの天国まで高く届くような伸びやかな歌唱が、特にサビに至るところでハンパなき高揚感をもたらしてくれる。AOR等を主体とした本流のシティポップとは方向性が異なるが、当時最新のムーブメントであったアシッド・ジャズを、日本人にも馴染みやすいポップスに仕立て上げたこの曲は、90年代シティポップの堂々たる名曲といえるだろう。(F氏)
27.

シングライクトーキング/風に抱かれて 1994年
アルバム『togetherness』(ファンハウス)より
作詞・作曲:藤田千章、佐藤竹善/編曲:シングライクトーキング
シングライクトーキングは常に良質な楽曲を届けてくれるユニットだ。中でも13CATSのキャット・グレーのプロデュースを受けていた時期はファンク色が強まり、ソリッドなフュージョン・サウンドで我々を強くひきつけた。その時期に発表された曲の中でひときわ輝きを放つのが、アルバム『togetherness』に収録された「風に抱かれて」だ。イントロからこちらの体を揺らしにかかり、エモーションズのコーラスも文字通りエモーショナルな傑作。90年代J-AORの金字塔的ナンバーだ。(バルベース)
26.

佐藤聖子/星よ流れて 1995年
アルバム『SATELLITE☆S』(フォーライフ)より
作詞:馬場俊英/作曲・編曲:朝本浩文
佐藤聖子が幸運だったのは、デビューから『マーベラスアクト』までの全編曲を担当しタッグを組んでいた水島康貴との相性がとてもよかったこと。そして不運だったのは、水島康貴との相性が良すぎたばかりにGiRLPOPからの脱却が遅くなってしまったこと。宮部ひかりが2枚目を最後に自分の音楽を追求し始めたのと対照的に、この「星よ流れて」の制作陣である馬場俊英、朝本浩史コンビと出会うのがすこし遅すぎました。佐藤聖子が最後に人前で歌ったとされている2003年の馬場俊英ライブにゲストで参加した時にもこの曲はやっているので、誰かがこっそり隠し録りしたものが出てきやしないかと、今夜も星に願いをかけています。(鯔)
25位〜1位までのランキングはこちら:
lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50 Vol.2 25位→1位